200のハディース |
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において
一、マッカ征服(ヒジュラ暦八年、西暦六二九年)
フダイビーヤ協定から二年、早くも協定は破られた。ク
ライシュ族は、協定に従って自分達と同盟を結んだバクル
族に軍資金と武器を与え、協定に従ってムハンマド側と同
盟を結んだフザーア族を襲わせて二十名の男を殺害させた。
殺戮を逃れたフザーア族のアムル・イブン・サーリムがム
ハンマドの許に来て支援を求め、クライシュ族が協定を破
棄したことを伝えると、一万人よりなる軍隊を秘密裡に整
えて、マッカ近郊に進んだ。イスラーム軍を偵察するため
表に出て来たアブー・スフヤーンを、ムハンマドの叔父ア
ル=アッバースが見つけて捕縛し、ムハンマドの許に連れ
てきた。アブー・スフヤーンは助命を求めて受け入れられ、
ムハンマドの勧めに応じてイスラームに入信した。イスラ
ーム軍は四隊に分れて、四方からマッカに入った。クライ
シュ族には既に抵抗する力はなく、無血のうちにマッカ征
服は成された。ムハンマドはカアバ神殿に赴き、神殿の回
りを七度周回してから神殿内に入り、最大の偶像神を手に
田?んで言った一「アッラーは至大なり。『言ってやるがよ
い。真理が下り、虚偽は消え去った。真に虚偽は消え去っ
たのである。』唯一なるアッラー以外に神はない。彼に並
ぶものはない。彼の約束は成就された。彼は僕に勝利を授
けられた。」部族連合は残らず滅び去ったのである。次い
で神段内の偶像を壊し神殿内から一掃した後に、ビラール
に礼拝への呼びかけを命じた。ビラールはカアバ神殿に昇
ると声高らかに礼拝への呼びかけを行った。「アッラーは
至大なり。私は、アッラー以外神がいないことを証言しま
す。私は、ムハンマドがアッラーの御使いであることを証
言します。礼拝に来たれ。成功に来たれ。礼拝の時は来た。
アッラーは至大なり。アッラー以外に神はない。」真にア
ッラーの御言は成就されたのである。「アッラーの援助と
勝利が来て、人々が群成してアッラーの教えに入るのを見
たら、汝の主の栄光を称えよ。彼に御許しを請い願うがよ
い。真に彼は度々改俊を受け入れられる御方である。」
二、使節の来訪
マッカを征服し、敵対勢力を次々と自身の勢力下に収め
ていくイスラームの勢いを目の当たりにした者達は、最早
イスラームに対抗する術も意味もないと悟るに至った。マ
ッカ征服の翌年にアラブ諸部族の使節が続々とムハンマド
の許にやって来た。
(二)アブド・アル=カイス族の使節
この使節の中にいたアル=ジャールード・アル=ア
バディーはキリスト教徒であったが、彼と、彼の仲間
の使節団員がイスラームに入信した。
(三)タイイ族の使節
ザイド・アル=ハイルを団長とする使節の全員がイ
スラームに入信した。
(四)ハニーファ族の使節
この使節の中に、後に預言者を僭称して大乱を引き
起こしたムサイリマがいた。
(五)キンダ族の使節
キンダ族の使節は年が明けて、ヒジュラ暦十年、西
暦六三一年にやって来て、全員がイスラームに入信し
た。彼らの中に、アル=アシュアス・イブン・カイス
・イブン・マアディーカリブがいた。
三、別れの巡礼
ヒジュラ暦十年、ムハンマドはマッカ巡礼を決意し、信
者達に呼びかけた。この時、ムハンマドと共に巡礼を行っ
た信者は十万人に達した。このときの巡礼の方法が現在に
至るまで続けられている。アラファに於いて、ムハンマド
にアッラーの啓示が下った。『今日、我は汝らのために汝
らの宗教を完成させ、汝らに対する我の恩恵を全うし、汝
らの教えとして、イスラームを選んだのである。』
四、ムハンマドの最期
巡礼を終えてマディーナに戻ると、ムハンマドは激しい
疲労を覚え床に臥すようになった。そして巡礼からニケ月
経つ頃には病状は深刻となり、最愛の妻アーイシャの許で
養生するようになった。このような病気の中でも、ムハン
マドは礼拝の指導はアブー・バクルに委ねたものの、自身
も礼拝に参列するよう努めた。最後にムハンマドは病をお
して、アブー・バクルの脇で座したまま礼拝を捧げると、
参列していた信者達に、アッラーの御言と自身の言行にし
っかりと縋り、分裂することのないよう遺言し、アーイシ
ャの部屋に戻った。ムハンマドがアーイシャの許で最後の
息を引き取ったのは、ヒジュラ暦十一年三月十二日の昼で
あった。ヒジュラ暦によれば、ムハンマドが生まれた日、
マディーナに移住の第一歩を踏み入れた日、そして息を引
き取った日はいずれも同月同日の事である。アムル・イブ
ン・アル=ハーリスは伝えている。「預言者は、ディナー
ル金貨一枚も、ディルハム銀貨一枚も、一人の男奴隷も女
奴隷も残されなかった。ただ彼が常用しておられた白いラ
バと武器と土地を残されただけでした。そしてそれらも全
て寄贈されたのです。」
| 日本ムスリム情報事務所 |